アロマテラピーでは精油の使用が前提
アロマテラピーでは、必ず精油を使用するという約束があります。
アロマオイルという製品名がついたもののなかには、アロマテラピーに適さないものがあります。
今回は、精油とは何か、また、精油を購入する際の注意点や保管方法について記載します。
精油(エッセンシャルオイル)とは
植物から抽出した香り成分(芳香成分)を精油、またはエッセンシャルオイルといいます。
「油」という漢字が使われていますが、オリーブオイルなどの油脂とは全く異なる成分です。
公益法人「日本アロマ環境協会(AEAJ)」では、【精油】の定義を下記のように定めています。
精油(エッセンシャルオイル)は、植物の花、葉、果皮、果実、心材、根、種子、樹皮、樹脂などから抽出した天然の素材で、有効成分を高濃度に含有した揮発性の芳香物質である。各植物によって特有の香りと機能を持ち、アロマテラピーの基本となるものである。
公益社団法人 日本アロマ環境協会(AEAJ) 精油の定義
アロマテラピーでは、精油を使用します。
精油と人工香料(フレグランスオイル、ポプリオイル、アロマオイルなど)は、明確に区別されます。
アロマテラピーでは人工香料は使えませんので、精油に関する基本的な知識をおさえておきましょう。
購入時の確認項目を先に確認したい方はこちら
植物にとって精油とは?
植物は光合成により、自らの栄養分や成長、繁栄、健康に必要な物質を作り出します。
- 太陽光エネルギーを植物の葉にある葉緑素(クロロフィル)より吸収
- そのエネルギーを使って植物が吸収する二酸化炭素と根から吸収する水を結び付ける
- 生命過程で必要な物質を全て産生
光合成によって産生されるものは、糖、たんぱく質などの毎日の栄養に欠かせないもの(一次代謝物)と、もしもの時に使うもの(二次代謝物)がありますが、芳香植物の個性的な香り(芳香成分)は二次代謝物として作り出されます。
ポイント
一次代謝物 毎日の栄養に欠かせないもの(糖、たんぱく質など)
二次代謝物 もしもの時に使うもの(精油など)
いろいろな説がありますが、動物と違い動くことができず、根を張ったところで一生を終える植物が、外敵(昆虫や動物)や病気(感染症)、天候の変化から身を守るため備えた武器の一つが精油と考えられています。
- 昆虫をおびき寄せたり、追い払ったりする
- 食べられないようにする
- 細菌、ウィルスからの防御
- 自身の傷を癒す
- ほかの植物の成長・発芽等を抑制する
- 乾燥の予防
- 植物体内でのホルモンのような役割をする
植物は、植物同士の情報伝達にも香りを利用しているといわれています。
また、植物が昆虫に襲われると、ある種の揮発性物質を出してその昆虫の天敵をおびき寄せ、結果として誘引された天敵に害虫をやっつけさせてしまうという仕組みなどもあるとか。
植物も生きるために戦ってるんですね。
精油はどこで作られる?
芳香成分は、植物のさまざまな部分(花、葉、種子、樹皮、木部、果実、根、果皮、茎)にある腺細胞という特別な細胞で産生され、腺の内部や油胞など特別な場所に貯蔵されます。
それを特殊な方法で抽出したものが精油(エッセンシャルオイル)です。
この精油が蓄えられている場所は植物によって異なり、それが精油の抽出部分の違いとなります。
みかんは皮をむくだけでも香りますね。
柑橘類の果皮の表面に見えるつぶつぶは油胞です。
だから、皮をむくと油胞が壊れ芳香成分が漏れ出て香るんです。
同じように、ミント、ラベンダーなどシソ科の植物は葉や花の表面に油胞を持つため、葉をこすると香りが指につきます。
一方、サンダルウッドは、腺細胞が管状になり心材(幹の中心部分)に含まれるため、精油を得るためには伐採せざるを得ないのです。
植物から抽出される精油の量はごくわずか。
例えば、ローズの精油1kgを抽出するためには約4000kgのバラの花びらが必要と言われています。
精油の中には大変高価なものがありますが、それはこの原料に対する抽出量の少なさが関係しているのです。
精油とは大変貴重なもの。
あまりに安価な場合は、人為的な加工をされていないかご確認ください。
精油が持つ特徴とは?
精油には、以下のような特徴があります。
精油の性質
- 水に溶けにくい
- アルコールに良く溶ける。
- 油脂に良く溶ける(親油性・脂溶性)
- 強い香りを持ち(芳香性)、常温で蒸発する(揮発性)
- 主成分は有機化合物で、分子量が小さい
- 光、熱、酸素によって変化し劣化する。
- 引火性(空気と混合し他から火や熱が移って燃え出す性質)をもつ
- さまざまな薬効がある
精油は数十種から数百種類の天然の化学成分で形成されていて、その成分の違いが香りの違いや効能の違い、つまり個性になっています。
精油には「油」の漢字が含まれていますが、オリーブオイルなどの「油脂」とは全く異なる成分です。
精油は、揮発性物質のため、基本的には全て揮発し跡を残しません。
もし、容器に垂らした精油の跡がいつまでも残るようであれば、精油ではなく合成香料等人工のものや偽和(ぎわ)である可能性があります。
※偽和については「こちら」をご参照ください。
色素を持つ精油や溶剤抽出法による精油であれば、色が残ることはあります。
精油はどのように保管したらいい?
精油は製造時より成分の変化が始まっていますが、適切に保管することで、より長く使用することができます。
精油の保管方法
- 開封したら日付を忘れずに書いておきましょう。
- 子供の手の届かないところに保管しましょう
- また、引火性があるため台所など火の気があると事での使用や保管は控えるようにしましょう。
- 極端な温度、湿度の変化に注意しましょう。精油は高温となると酸素と結びつきやすくなり劣化が早まります。
- 遮光瓶に入れて、太陽光が当たらないよう冷暗所で保存します。
- 酸素により劣化が早まりますので、揮発を防ぐためにもキャップをしっかり閉めましょう。
- 植物油に数種類の精油を希釈して使うような場合は、ブレンドすると劣化が早まるため、なるべく使用するときに調製します。
- 開封後は柑橘系は6か月、その他は1年程度を目安に使い切りましょう。使用時には必ず香りを確認するようにしましょう。
購入の際に一番大切なことは、植物から抽出された天然の「精油(エッセンシャルオイル)」を選ぶことです。
精油や合成香料をアルコールや溶剤で希釈したアロマテラピーには適さない商品が、
エッセンシャルオイル、アロマオイル、ポプリオイル、フレグランスオイルなどの商品名で販売されていることがあります。
精油とは異なる類似品であっても、「香りを楽しむ」観点から、各商品の取り扱い方法に従う利用に問題はありません。
しかしながら、アロマテラピーでは100%植物由来の「精油」の使用を前提としており、合成香料、アルコール、溶剤等が添加されているものは適しません。
精油としてアロマテラピーに使用できるかは、下記を確認する必要があります。
- 精油に関する基本的な項目が明記されている
- 成分分析表が付属している
- ガラス製の遮光瓶である
- 1滴づつ落とすためのドロッパータイプの中栓がある
下記より一つずつ説明していきます。
精油に関する基本的な項目が明記されている
基本的な項目とは以下のとおりです。
- 精油であること(精油、エッセンシャルオイル、Essential oilなど)
- 原料植物の学名
- 栽培方法(野生、有機農法など)
- 抽出部位
- 抽出方法
- 原産地
- 製造元
成分分析表が付属している
通常、精油には、「成分分析表」が付属しています。
なお、一部業務用の大容量サイズには付属していないこともあるようですので、その場合には、小容量サイズで判断するか、信頼できるメーカーの製品かをご確認ください。
ガラス製の遮光瓶に入っている
精油は紫外線で劣化するため遮光瓶が選ばれます。
また、精油によってはプラスチックを溶かすためガラス製の容器で販売されています。
プラスチック製のスプレー容器でルームスプレーを作ると容器が壊れる(出てこなくなる)ことがありますが、 その場合は、精油の原液が触れた部分のプラスチックを溶かしていることが考えられます。
ドロッパータイプの中栓がある。
精油を肌に利用する際には、1%以下に希釈する必要があります。
その際に希釈濃度を測れるよう、容器は1滴0.03~0.05mlとなるよう作られています。
中栓には、大きな空気穴が一つ開いているタイプと、小さな空気穴が4つ空いている2つのタイプがあります。
専門店での購入がおすすめ
初めての場合は特に、精油を安全に使うために、正しい知識を持った専門スタッフが常駐する専門店での購入をお勧めします。
なお、専門店がお近くにない場合は、下記の「AEAJ表示基準適合認定精油」ブランドリストが一つの目安になるかと思いますのでご参照ください。
※選択すると外部リンクへ遷移します。
精油について(補足事項)
世界中で通じる「学名」
学名とは、国際的な命名規約(万国命名規約)による世界共通の名称です。
スウェーデンの植物学者リンネが創始した二名法に従って、ラテン語(またはラテン語化した名詞と形容詞)で表されます。
例)ローズマリーの学名
ロスマリヌス オフィキナリス
Rosmarinus officinalis
属名 種小名
※ケモタイプの場合、成分前に「ct」が表記されるか、種小名の後に「campher(カンファ―)」、「cineol(シネオール)」と付記されることがあります。
属名と種小名の組み合わせで原料植物が特定されます。
学名さえ知っていれば世界中どこへ行っても自分の欲しいドライハーブや精油を購入できますね。
成分に大きな違い ケモタイプ(化学種)
精油の香りは、気温、土壌の質、日照条件など原料植物の生育環境を受け、毎年微妙に変化します。
大幅に違うものは期待される薬理作用も変わってしまうため、別の精油として扱われますが、植物学的には同じ種なのでケモタイプ(Chemotype:化学種)と呼ばれます。
ケモタイプがある精油:ローズマリー、タイム、ニアウリ
ケモタイプでは、学名の後に成分名を記し、区別します。
ベルガプテンフリー 光毒性の心配がいらない精油
光感作を起こす成分(フロクマリン)を取り除いた精油は、ベルガプテンフリーもしくはフロクマリンフリー(FCF)と表記されています。
いつわり?水増し??偽和(ぎわ)
特定の高価な精油に、安価な精油もしくは合成物を加えて調整したものをさします。
おわりに 「精油」を選びましょう
アロマテラピーでは必ず精油(エッセンシャルオイル)を使用するというルールがあります。
ポイント
- 精油に関する基本的な項目(学名、抽出部位など)が明記されている
- 成分分析表が付属している
- ガラス製の遮光瓶である
- 1滴づつ落とすためのドロッパータイプの中栓がある
初めての場合は特に、精油を安全に使うために、正しい知識を持った専門スタッフが常駐する専門店で購入するようにしましょう。
また、精油は100%天然のものではありますが、大変濃縮されたものであるためルールを守って使うことが必要です。
アロマテラピーが初めての方は、下記をご参照ください。
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